明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「承知しました。こちらへどうぞ」


おそらくこの婚姻をなんとかしてまとめたいと思っている父は、ふたつ返事で受け入れ、私たちを別の部屋へと案内した。


座卓をはさみ向かい合って座ると、行基さんが口を開く。


「あやさん。俺はもう誰かを傷つけたりしたくないんだ」


だから私との結婚は受け入れられないということだろうか。


「私は傷ついたりしません。初子さんのように心に想う方もいませんから」

「だが、俺を好いているからではないだろう? 無礼を承知で言うが、一橋家が傾いているのは知っている。きみはきみなりに、一橋家を守ろうとしているんだろう?」


それは否定できない。
孝義の未来を守りたいというのは本当だからだ。


「そうではないとは言いません。でも、行基さんのお優しい言動を見ていて、行基さんとならと思ったのもまた事実です」


正直に告げると、彼は黙り込んでしまった。
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