明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
「あやさま、もうおやめくださいと申し上げましたでしょう? このようなことは私たちで致しますから」
「どうして?」

「ですから! あやさまはあの津田さまに嫁ぐんですよ? もう少しこう……お嬢さまらしくと言いますか……」


まつは困った様子で眉をひそめる。


「でも、津田家に行ったらできなくなるかもしれないんだからやらせて?」


私は雑巾を片手にもう一度縁側を拭き始めた。

まつが“あの”津田さまとよく言うが、それは津田家の裕福さ故だ。

爵位を持つ一橋家の社会的地位を得て、『成金』と卑下されないようにするという目論見から始まった縁談らしいが、私は最初はそれが理解できなかった。

なぜなら津田紡績はもう社会から十分に認められるほどの規模を誇り、貶められる所以など見当たらないからだ。

けれども、行基さんのお父さまが会社を興した際、爵位を持たないということで散々な目に遭ってきたんだとか。
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