明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
高い給料を払ったものの、結果その何倍もの利益を手にしたという、実に商売の戦略がうまい人だと言われているそうだ。

そうして津田紡績は年々その規模を大きくしている。

長年先頭で走り続けてきた行基さんの父・津田社長は、常々行基さんに社長業を譲りたいと考えていて、祝言が終わったらその予定だ。


行基さんとは祝言まで会う予定はない。

初子さんと周防さんの恋を近くで見ていたので、当然何度も逢瀬を重ねるものだと思っていたのに、家と家とのつながりを重視した婚姻はそんなものらしい。


行基さんが忙しく飛び回っていて、空いた時間がないというのも理由のひとつではあるけれど。


彼は私に、『愛せないかもしれないが覚悟はあるか?』と尋ねた。
それはこういうことなのだと実感している。

私のために無理をしてまで割く時間がないのだろう。


それでも、密かに憧れている人のところに嫁げるのだから、贅沢は言わない。
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