スリジエの花詞
* * *
スリジエの花詞を知っていますか。
その問いに、彼女は予想通りの返答をした。
それはそうだ。この国で生まれ育ち、他の国の言語に興味を示さなかった彼女が知るわけがない。
葛城家の当主の娘に仕えていた執事・伊尾は、彼女と十三年間過ごした家を出た後、ある場所に向かっていた。
そこは、春になると、彼が好きな花であるスリジエが満開に咲く場所でもある。
葛城家本家の敷地内にある、離れと呼ばれている場所。
「――失礼いたします」
燕尾服ではなくスーツを身に纏う伊尾は、流麗な所作で襖をゆっくりと開けた。
その向こうには、葛城家の当主であり、雅の祖父でもある男が座って庭園を眺めていた。
男は伊尾の来訪に気付くと、花開くように笑みを飾る。
「――久しいな、圭佑」
「お久しぶりにございます、会長」
伊尾は静かに部屋に入ると、人ひとりぶんの距離を空けて、男の前に腰を下ろした。
そして、胸ポケットからある小さなものを取り出し、男に差し出す。
「私の願いを叶えてはくださいませんか」
スリジエの花詞を知っていますか。
その問いに、彼女は予想通りの返答をした。
それはそうだ。この国で生まれ育ち、他の国の言語に興味を示さなかった彼女が知るわけがない。
葛城家の当主の娘に仕えていた執事・伊尾は、彼女と十三年間過ごした家を出た後、ある場所に向かっていた。
そこは、春になると、彼が好きな花であるスリジエが満開に咲く場所でもある。
葛城家本家の敷地内にある、離れと呼ばれている場所。
「――失礼いたします」
燕尾服ではなくスーツを身に纏う伊尾は、流麗な所作で襖をゆっくりと開けた。
その向こうには、葛城家の当主であり、雅の祖父でもある男が座って庭園を眺めていた。
男は伊尾の来訪に気付くと、花開くように笑みを飾る。
「――久しいな、圭佑」
「お久しぶりにございます、会長」
伊尾は静かに部屋に入ると、人ひとりぶんの距離を空けて、男の前に腰を下ろした。
そして、胸ポケットからある小さなものを取り出し、男に差し出す。
「私の願いを叶えてはくださいませんか」