スリジエの花詞
男は笑みを剥がすと、差し出された小さなものを受け取り、目を皿のようにしてそれを見つめた。

伊尾が差し出したものは、黒いメモリーカードだった。


「…まずは願いを聞こう」


伊尾は綺麗に微笑んだ。


「――雅さまに、自由を」


男は驚いたように伊尾を見る。

何を馬鹿げたことを、と。


「そのために何を差し出すんだ?」


伊尾はメモリーカードを握る男の手に自身の手を添えると、耳元で囁いた。


「長年、貴方様が欲しがっていた、あの情報にございます。そして、もう一つは——…」


告げられた願いの代償に、男は微笑んで頷いた。

伊尾は笑った。とても、儚げに。
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