俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


でも、違いは……ほしい。

友だちと、好きな人の違い。みんなと一緒は、嫌。



「そういやさ」



机に左手をついた大志くんくんが、右手を私のほうに伸ばす。そしてその大きな手が私の結んでいた髪の毛に触れた。


あまりに突然のことに驚いて、息ができなくなる。



「今日いつもと違うじゃん」

「う、うん……」

「まあ、似合ってんじゃね?」



私を見て、大志くんが笑っている。これ以上に嬉しいことって、あるのだろうか。


大志くんは友だちのままの関係が居心地いいのかもしれない。私もそうだよ。いまの関係でも、嬉しいこと、幸せなことはたくさん溢れている。


恋をしていたら、小さななんでもないことでも喜びに変わる。


でもやっぱりだからこそ、君の特別になりたいと思うのだろうね。


他の人とは違うってこと。証がほしい。これって欲張り、かな。



「お前の髪、ふわふわだなっ」



私の髪の毛で遊ぶ大志くんは無邪気。
ずっとコンプレックスだった、癖っ毛。綺麗なストレートに憧れていた。だけど大志くんの言葉で生まれて初めて癖っ毛でよかったと思ったよ。


これも恋の魔法じゃないかな。

どこまでも私を虜にしていく。無自覚なのが、本当にすごい。



「もう、やめてよ。ぐしゃぐしゃになる」

「ふはっ、ごめんて」

「もう」



怒ったふりをした。照れ隠し。

熱いのは、夏のせいなんかじゃ、きっとない。


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