俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
靴を履き終えた大志くんがこちらに背中を向けた。私は考えるよりも先に足を動かしていた。
「待って……!」
「うお……!?」
すでに歩きだしていた大志くんの制服を引っ張った。私は、うわぐつのままだ。
驚いて目を丸くした大志くんが振り返る。私を見てなにかを言いかけて、やめた。
私はそんなに走ってもいないというのに、肩で息をしている。あれから、うまく呼吸ができないでいるのだ。
いま自分がどんな顔をしているのかさえ、わからない。
「どうした?」
「…………」
答えられない。なんて言葉にしたらいいのかわからない。そもそも自分でも大志くんになにを求めているのかわからないでいた。
ただ、ひとりになるのが怖い。もしかしたら、そばにいて欲しいのかもしれない。
無言が続き、でも大志くんはその沈黙の中でも表情を変えることなく、頭の整理がつかない私のことを待ってくれている。
スッと、大志くんの手が上に伸びた。そのまま頭上に手のひらが降りて、私はびっくりする。
撫でられることもなく、置かれた手。数秒後、その手が今度は私の手を掴んだ。
「帰るぞ」
「え?」
「送ってやる。早く靴に履き替えろ」
無愛想な顔で、無機質な声。そして離された手。
軽くなった手首に寂しさを感じたのは……気のせい?
私は言われた通りにうわぐつから靴に履き替えた。