俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


外の景色に視線を投じたままぼうっとしていると、朝のホームルームが始まるチャイムが鳴ってみんながぞろぞろと席に着きはじめる。


そのダラダラとした動きを見ながら私は欠伸をして、机に突っ伏した。



***



放課後になった。帰り支度を済ませて、用事があるらしい親友の結衣羽を見送った。
そしてどんどんクラスメイトがいなくなる教室で、ひとり席に着いてとなりのクラスから佐藤くんが迎えに来てくれるのを待つ。


ふとそのとき、頭上から影が落ちてきて、顔をあげた。大志くんだった。



「……今日はひとりで帰れんのか?」



ぶっきらぼうな声。さっきまでクラスメイトと話していた声のトーンとはまるで違う、その声。



「大丈夫だよ。それに、これから勉強会があるんだ」

「へぇー」



どかっとすこし豪快に私の前の席に座った大志くん。
じんわりと手のひらと額に汗がにじむ。暑いわけでもないのに。ただ、大志くんが近くに来ただけなのに。



「朝の男と?」

「……そ、そうだけど」

「ふぅーん」



鋭い目つき。どこか不機嫌なその眼差しに下唇を巻き込んで噛む。



「ま、ちゃんと勉強して赤点だけは取んなよ」

「心配されなくても……っ」

「勘違いすんな。心配してねぇーよ、べつに」



合っていた目線をそらしたのは、大志くんだった。
嘘をついている。そんな気がする。

心配……してくれているんだよね、きっと。
だからこうして話しかけてくれたんだよね?


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