俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
そう、かもしれない。
もうずっと、好きだったのかもしれない。
好きだと認めたのは昨日だったけど、私にだけ無愛想なところを見せたり、ぶきっちょな優しさで守ってくれたり、昨日だっていつでも連絡してこいって言ってくれた。
そんな彼に恋をした瞬間なんて、いつかわからない。
恋って突然落ちるものだと勝手に思い込んでいた。
だけどいろんなものが蓄積されて恋に形を変えていくことも、あるみたいだ。私の場合がそれにあたるだろう。
「まあ、頑張りな」
「うん」
頑張りかたも、頑張ったところでこの恋が実る保証もないけど、でも、大切にしたい。この初恋。
叶わなくてもいい。好きってこの気持ちが私の心のなかにあるだけで。
***
放課後になった。掃除当番だった子のひとりが間違えてアルバイトを入れてしまっていたらしく、なんの予定もなかった私はその子と掃除当番を交代した。
久しぶりに結衣羽と帰れるかなと思っていたけど、しょうがない。
「もも、ホントありがと!助かる!」
「ううん、全然だよ。早くバイト行ってらっしゃいな」
手を振って彼女を見送った。
彼女の当番はたしか東の階段だったな。誰とだっけ。
そんな考えごとをしながら担当の階段まで到着した。そしてそこにいた人物に驚く。
「え、大志くん?」
「あれ、お前なにしてんの?」
いや、それはこっちの台詞。
大志くんは私と同じ班わけされてるから、交代した子と同じときに掃除当番なわけないのに。