俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


目を丸くする私に大志くんが「用事があるってやつと交代したんだよ」と話してくれた。



「私と同じだ」

「ったく、お人よしだな」

「大志くんもね」



手にしていた雑巾で階段を拭きあげていく。大志くんも同様に掃除をはじめた。

無言が続くと思いきや「そういえばさ」と大志くんが再び口を開いた。



「大丈夫なのか?」

「へ?」

「朝、なんか思いつめたような顔してたから」



私がいつそんな顔した?
あ、もしかして今朝「大丈夫?」と尋ねられたときだったりする?



「なんでもないよ、本当に大丈夫だから」

「……俺さ、昨日の夜結構遅くまで起きてたんだ」

「……?」

「お前から連絡きたらすぐ反応できるように」



合った目は頑張ってそらさない。でもあまりに嬉しくて、血が駆け足で身体中を駆け巡る。私の心臓、働き者すぎる。



「わりと俺は真面目に心配してる」

「うん……」

「遠慮せずなんでも言ってこいよ」



こんなに優しくされると、調子が狂う。好きだと自覚したあとだから、余計に。
大志くんには無愛想で意地悪でいてもらわないと困る。


じゃないと、もっともっと、好きになっちゃうから。


好きって気づいて2日目でこんなに好きなのに、これから毎日どんどん好きが積み重なっていったら、どうなってしまうのか想像できない。


目に見えない心が、その重みに耐えられなくなってパンクでもしたらどうしよう。



「ありがとう」



お礼を言ってから、掃除の続きをした。


< 76 / 143 >

この作品をシェア

pagetop