俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
目を丸くする私に大志くんが「用事があるってやつと交代したんだよ」と話してくれた。
「私と同じだ」
「ったく、お人よしだな」
「大志くんもね」
手にしていた雑巾で階段を拭きあげていく。大志くんも同様に掃除をはじめた。
無言が続くと思いきや「そういえばさ」と大志くんが再び口を開いた。
「大丈夫なのか?」
「へ?」
「朝、なんか思いつめたような顔してたから」
私がいつそんな顔した?
あ、もしかして今朝「大丈夫?」と尋ねられたときだったりする?
「なんでもないよ、本当に大丈夫だから」
「……俺さ、昨日の夜結構遅くまで起きてたんだ」
「……?」
「お前から連絡きたらすぐ反応できるように」
合った目は頑張ってそらさない。でもあまりに嬉しくて、血が駆け足で身体中を駆け巡る。私の心臓、働き者すぎる。
「わりと俺は真面目に心配してる」
「うん……」
「遠慮せずなんでも言ってこいよ」
こんなに優しくされると、調子が狂う。好きだと自覚したあとだから、余計に。
大志くんには無愛想で意地悪でいてもらわないと困る。
じゃないと、もっともっと、好きになっちゃうから。
好きって気づいて2日目でこんなに好きなのに、これから毎日どんどん好きが積み重なっていったら、どうなってしまうのか想像できない。
目に見えない心が、その重みに耐えられなくなってパンクでもしたらどうしよう。
「ありがとう」
お礼を言ってから、掃除の続きをした。