アスカラール
(成孔さんはクッキーとかチョコレートじゃなくて、オランジェットって言うイメージなんだよね)

オレンジを切りながら、美都は心の中で呟いた。

砂糖漬けにしたオレンジをチョコレートで包んだそれは、ピール(果実や野菜の保護層)の苦味とチョコレートの甘味の調和、カカオの深い香りが魅力だ。

(いつも甘い香りをさせているもんね)

成孔がいつも身につけている綿菓子かチョコレートのようなお菓子の香りを思い出しながら、美都はオレンジを切った。

オレンジを切り終えると、棚から大きめの鍋を取り出して、そこに切ったオレンジを並べた。

砂糖と水とブランデーを入れて中火にかけた。

フツフツと沸騰してきたことを確認すると、アルミホイルで落とし蓋をすると弱火にした。

「成孔さん、喜んでくれるといいな。

美味しいと言ってもらえるといいな」

甘く煮立っているオレンジを見ながら、美都は呟いた。
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