身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
産婦人科は呼び出しも昼夜問わずで、訴訟などのトラブルも多く、母は気が休まる時がなかった。
それでも母は、家庭では笑顔を絶やした事がない。いつも忙しく動いていたけれど、いつだって母は笑っていた。
麻酔科の父も激務だった。緊急手術となれば、こちらも昼夜はおかまいなし。手術が立て込めば、数日帰宅しない事もザラだった。
けれど父も、どんなに忙しくしても私たちに穏やかに優しく接した。
あまり口数の多い父ではなかったけれど、大きくて温かな手が、広い背中がいつも頼もしかった。
そんな父の背中に、私は幼い恋心を募らせた。それはきっと、女の子によくある、一番身近な異性への淡い恋。
長じても、私は父以上に魅力ある男性には出会わなかった。母のような魅力的な女性にも、同様に出会わない。
二人以上に尊敬できる人は、いない。
私にとって、両親という壁はあまりにも高い。そうして兄たちもまた、私には高すぎる壁だ。
あれは、私が現役での医学部受験に敗れてすぐの事。