身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「一学年遅れる事になるけど、俺はこの一年を足踏みだとは思わないよ」
「そう、きっとお父さんも反対しないと思うわよ。だけど悟、必ず無事に帰って来て? これだけは約束」
母さんは向かいに座る悟兄さんの手に、そっと自分の手を重ねた。
「うん、母さん」
悟兄さんは照れたように笑って、母さんの手を握った。
「いいな、俺も来年行っとこうかな」
それを見た次兄の学兄さんが軽い口調で呟く。
「学、向うに行けばシャワーの水だって規定分で済ますんだぞ? そもそも現地スタッフとの相部屋だ。お前の潔癖じゃ無理だぞ。行っとこうかな、くらいの志だと挫折するぞ?」
それを聞き付けた悟兄さんが、呆れた様子で肩を竦める。
確かに潔癖という程ではないけれど、お洒落に気をつかう学兄さんがライフラインも満足に整わない途上国で一年も過ごすのは難しい様に感じた。
「え!? 俺、シャワーくらい好きなだけ浴びたいわ。止めとく……ってか、一年遅れだと俺と兄さん同学年!?」
「あら! 兄弟で通えるなんて素敵ね!」
「……母さん、ちっとも素敵じゃないし。大学でまで兄貴と四六顔合わせるなんて悪夢だよ」
母さんと兄さんたちの会話を横で聞きながら、私の胸はもやもやした感情が渦巻いていた。