独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 ユリスタロ王国に学校というものは存在しないけれど、冬に皆集まって暮らしている間は、子供達の面倒を見るのは、年かさの少女達の仕事だ。

 朝食が終わると、親達はそれぞれの仕事に行ってしまう。残された子供達は、フィリーネやヘンリッカ達が字を教えたり計算を教えたりしている。

 字の読み書きができるようになった子達は、裁縫をしたり、レースを作る練習をしたり、編み物をしたり——それから、木工細工に、壊れた家具の修復の練習。それをまたもう少し年かさの子供達が見てあげて——といったように、冬の間は大きな家族みたいに暮らしているのだ。

「俺が考えたこともないような世界が広がってるな……」

 そう言うアーベルは、素直に感心したみたいだった。たしかに、彼の育ってきた環境には、こんな経験をする機会なんてなかっただろう。

「だから、レースづくりが忙しいのは冬なんですよね。夏の間は——どっちかっていうと、他の仕事が忙しいので。レース産業だけに頼るのは危険だっていうのが祖父の考えだったんです。だから、畑仕事も、漁も、本来の仕事は忘れちゃだめだって」

「……へえ」

 拡大鏡の導入により作業効率が上がったとはいえ、手を動かすのは人間だから劇的に速度が上がったというわけでもない。
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