独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 フィリーネが、ユリスタロ王国のレースの販売権を与えたのは、クラインの店一軒だけだ。それは、あまり大量に流通させてしまうと販売が追い付かないこと、そして、販売数を絞ることによって価値を低下させないことが理由だった。

 クラインからは、三乙女のレースを生かすデザインのドレスを提供してもらって、日頃はともかく、大切な場に着ていくドレスには不自由していない。

 戻るぞ、と言うなり、アーベルはフィリーネの腕を引っ張り上げる。彼にそんな風にされて、フィリーネの心臓はまた跳ねた。
 すれ違う人達の視線が気になって仕方ない。フィリーネとアーベルでは釣り合わないと言われているみたいで。
 それは実際のその通りだし、今さら否定しても始まらないのだが。

(……ただの、友人ならよかったのに)

 異性の友人といえば、親戚でもあるパウルスくらい。
 アーベルともう少し違う形で出会っていたら、こんな妙にそわそわする感じではなくて、違う形でいられたのではないかと思った。

「——お前、変な顔してるぞ」
「そ、それはもともとですっ!」

 ぷいっと顔を背けて、アーベルから表情を隠す。
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