独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 ヘンリッカを呼んで、ふさわしいドレスを探してもらう。アーベルからもらった腕輪は、今日のドレスには合わなかったけれど、外すことはできなかった。

 南の広間には、多数の令嬢が集まっていた。アーベルに連れられて入ってきたフィリーネに一斉に視線が突き刺さる。

 他の令嬢達から少し離れたところにテーブルを用意するようにと命じたアーベルは、フィリーネと向かい合って座った。

 先日から、どうも彼と上手におしゃべりできていないような気がする。正面から、彼の顔を見ることができなくなって、フィリーネは視線を落とし、テーブルの上で意味もなく手を組み合わせたり解いたりした。アーベルの目が、はめたままの腕輪に吸い寄せられる。

「その腕輪、まだつけてるのか」
「すごく、気に入ったから。可愛いと思いませんか」
「そんなの——あ、いや。俺が言うことじゃなかったか」

 向き合って話をしているものの、どうも盛り上がらない。アーベルはフィリーネと視線を合わせないようにしているし、フィリーネの方もアーベルとは目を合わせられない。
 少し前までは、こんな風ではなかったはずなのに。
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