独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ドレス本体に使っても素敵だし、それから、ええと——そうですよね、シエルのレースだっていいし、ドリーのレースも!」
「お前、身を乗り出しすぎ。ちょっとは落ち着け」

 いつの間にかテーブルの上に上半身をほとんど乗り出していたことに気が付いて、フィリーネは赤面した。どうも最近の自分は、ちょっとおかしい。
 だけど、今の会話で、二人の間に生じた微妙な空気は、一瞬にして消し飛んだ。アーベルは、フィリーネのことを、あまり怒ってはいないようだ。
 フィリーネにとっても、その方がいい。難しいことは頭から追い払って、どうにかして、もうちょっとだけ楽しい時間を彼と過ごすことができれば。

「それと——お前に言っておかないといけないことがある」
「なんですか?」

 アーベルに言われ、フィリーネは目を瞬かせた。彼が、フィリーネに言っておかなければいけないことってなんだろう。
 テーブル越しに顔を寄せ、ひそひそとささやき合っている自分達の姿が、周囲の令嬢にはどう見えているのか、フィリーネに考える余裕は失われていた。
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