独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 アーベルはフィリーネのことを母に理解してもらおうと、ユリスタロ王国の王族と国民との関係からクライン相手の交渉に街中に出た時の様子まで、彼女について話した。

「……あら、そうなの……」

 だが、アーベルの返事は、母には気に入らない様子だった。やはり、ライラを押したいのだろう。

「ええ。国と国との立場で考えれば、彼女を選ぶのは好ましくないというのもわかっています。その時には——適切な判断をするつもり……で——」

 自分の言葉なのに、どうしてこんなにも自信なさげに声が途中で消えるんだろう。困惑しているアーベルに向かい、母は小さくため息をついた。

「ねえ、私もお父様も、あなたに国のためだけに結婚しろと言うつもりはないのよ」

「でも、父上と母上も政略結婚ではないですか」

「それも否定はしないけれど。言っておきますけれど——『国のため』だけではないのよ。私達だって」

 そういうものなのだろうか。父と母は、婚約が成立するひと月前に顔を合わせただけで、婚儀に挑んだはず。そこに好意の生まれる余地なんてあったのだろうか。
< 225 / 267 >

この作品をシェア

pagetop