独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!

(こっちに来てからずっと私と一緒だったものね)

 パウルスとヘンリッカは婚約したばかりだ。来年には結婚することも決まっているけれど、恋人同士なのに、こちらに来てからはいつもフィリーネと三人で行動している。いくら三人の仲がいいとはいえ、二人での時間だって必要に決まっている。
 二人で街に買い物に出たついでに、手をつないでのんびり街中を散策してくればいい。

 部屋ではなく、裁縫室に来たのは、裁縫室に置かれている等身大の人形が目当てだ。それに仕立て直したドレスを着せて最終的な仕上がりを確認するつもりだったのだ。

 裁縫室に来てすぐフィリーネが広げたのは、同じ色合いのピンクのドレス二着。片方は母のものでもう片方は祖母のものだ。
 祖母のドレスについていた飾りを外してしまい、母のドレスから取ったピンクの花を、ポイントになるところにつける。サッシュは祖母のドレスのものをそのまま使うことができそうだ。
 そして、襟のところと袖口に国から持参したレースをつける。

 ヘンリッカかパウルスがいれば、おしゃべりしながら作業を進めるが、今は二人ともいない。一人、黙々と針を動かす。
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