艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
大学を出てから今の百貨店に就職して、丸二年が経った。それでもおばあちゃんは時々私を見てはしみじみとさっきのようなセリフを言う。
よほど祖母の中では、幼い頃や学生時代の私のイメージが強いのだろう。
「お前はフラフラ頼んないイメージなんだよ。ばあちゃんに取ったら」と、兄がにやっと笑いながら意地悪なことを言う。
「別にフラフラしてないし。ちゃんと働いてるし。お兄ちゃんこそちょっとは職人さんに怒られなくなったの?」
「うっせー」
「アンタたち、やめなさいよ恥ずかしい」
兄弟喧嘩が始まりそうになり、母親に窘められる。祖母がまた、年を重ねた優しい声で笑った。
「康太も藍も、立派になったわよ」
老舗和菓子屋といっても、特に裕福というわけでもないし、家族の雰囲気はそこらの一般家庭と然程変わらない。
ただちょっと、和菓子に関わることになると頭が固くなる両親と兄なだけで、私はこの家族が大好きだった。