艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
気恥ずかしさを覚えたのは、彼に会ってからだった。
「何が入ってるの?」
彼が、助手席に座った私の膝からその保冷バッグを持ち上げ、運転席との間から後部シートへ移動させる。
その重みに不思議に思ったらしい。
「あの……お弁当を」
言葉にしてから、じわ、と顔が熱くなって汗が滲み出た。
やっぱり、いきなり張り切り過ぎだったろうかと、茹で蛸のようになっていた私だったが。
「いいね。公園で食べる?」
「あ、うん。そのつもりで……天気も良さそうだし」
さらりと受け入れてくれた葛城さんに、ほっとする。
「ありがとう。手料理なんて久しぶりだな」
「たいしたものは作ってないですよ」
そう言いつつ、喜んでもらえたことに、私も頬が緩んだ。