艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「すみません、つい、興味深くて……ピアスありがとうございました」
変に反応してしまったことを悟られないよう、なんでもないフリで話を続けた。
さっき親切に教えてくれたお姉さんの作品の中から、小さな青い花とコットンパールがキラキラ揺れるピアスを葛城さんが買ってくれたのだ。
「藍さん、指輪つけてくれないしね……ピアスならと思って」
「えっ! あれは無理です、ピアスだからとか指輪だからとかではなくてですね」
高価過ぎて、とてもじゃないが恐ろしくて普段使いなんて出来ないのだ。石だって大きいし、手を洗うのも気を使う。洗い物なんて怖くて出来ないし、仕事には当然付けてはいけない。
もちろん、今度また葛城さんのパートナーとして人前に出るときは身につけるつもりだけれど。
「気にしないで使ってくれたらいいのに。……雲行き、怪しくなってきたね」
ふと、葛城さんの目が私から逸れて前方の空を見上げる。
同じ方向に目をやれば、さっきまであんなに晴れていたのにどんよりとした灰色の雲が太陽を隠そうとしていた。