艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
私がドア前で決めた覚悟とは、別の覚悟が必要だったようだ。


大事だろう仕事の書類だけ片付けてもらって、風邪をひくからと先にシャワーを浴びてきてもらい。
その間に、私はとりあえずリビングの体裁を取り繕い、汚れたカップを洗う。


お弁当のお重をテーブルに置いて、勝手にお皿を拝借し準備を整える。
カーテンで閉ざされていた窓を開けると、雨で灰色の景色だけれど絶景が広がっていた。


「すっ……ごい」


何階だっけ?
最上階だからそれだけ覚えてた。


天気が良ければ、もっと遠くまで見渡せただろう。
夜景も美しいはず。


こんないいとこに住んでて、ほんとにもったいない。
なんでも完璧にこなしそうな人だと思っていたけれど。


「……案外手がかかりそう」

「じゃあ、藍さんが面倒見てくれる?」



そんなセリフと共に、真後ろからシャンプーの香りがした。
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