艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
綺麗に空になったお重を見ると嬉しくなって、つい口元を緩ませながら片付ける。
お重の横には琥珀糖の瓶があり、それはテーブルに出したままでお重だけを保冷バッグに戻した。
「ありがとう。手料理なんかほんとに久しぶりに食べた……」
「いつも外食ですか? 身体壊しますよ」
「手がかかる男で悪いけど、本当にいろんな意味で早く嫁に来てくれない?」
甘い理由よりも、どちらかというと切実さの籠ったセリフが私たちの関係らしくて笑ってしまう。
「仕事辞めたら、掃除とかしに来ます」
「本当に? じゃあ、これ渡しとく」
彼が不意に、私の手を取ると手のひらに何かを握らせる。
「いつ来てくれてもいいし、泊まってくれてもいいよ」
手を広げると、そこには真新しい鍵があった。