艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「この家の、合鍵?」
「そう」
当然だろう、と言いたげに彼が苦笑いをする。
「君が気軽に寝泊まりできるようにゲストルームを……うん、片付けとくから」
いまいち頼りない語尾に、思わず吹き出してしまった。
一瞬、『泊まってもいい』という言葉に緊張してしまったけれど、そういう私のことも彼はわかってくれているらしい。ゲストルームを用意してくれるのは、そういう意味だ。
これまで彼はあの『不意打ちキス』以来、強引に何かしようとしたことも、抱きしめたこともない。別れ際の、頬のキスだけ。
本当に、紳士的だった。
「わかりました。ご飯も作らないと葛城さん病気になっちゃいそうですし」
ありがとうございます、と受け取った鍵をバッグにしまう。