艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
この人は、今まで上手に私の警戒心を解いてくれていたのだと思う。
夫婦になるのだから、私からも歩み寄るべきだし……そう、嫌じゃない。


ただ、なんと答えたらいいのか素直には言葉が出てくれない。


「……いちいち聞かれたら恥ずかしい」
とぼそっと呟いたらもっともな言い分を返された。


「不意打ちでしたら殴ったくせに」

「あ、あれは! ファーストキスが不意打ちの一瞬で終わったからで!」


慌てて言い訳をした私は、うっかりファーストキスだったとばらしてしまった。多分、バレバレだったろうとは思うけれど。


てっきりそのことでまた揶揄われると思ったら、彼は意外なところで微笑んだ。


「ふいうちじゃなければ嫌じゃなかったってことだ」


優しいだけだった彼の微笑みに、今まで潜ませていたのだろう妖艶さが滲み出る。「う」と言葉に詰まった私は。


「だから。聞かないでくださいってば」


そう言うので精一杯だった。


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