艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
素直に言うってこんなに難しいことだった?
顔が火照って熱くなるほどに、泣きたいわけでもないのに目が潤む。


くん、ともうひとたび腕を引かれて半歩前に出て前屈みになってしまい、一層距離が詰められぎゅっと目を閉じてしまった。
すると、急に、両腕を掴まれたと思ったら、くるんと回されて葛城さんに背を向ける形になった。


「えっ?」

「これ、何? さっきから気になってた」

「え?」


私を後ろから抱きしめながら、彼が少し腰を上げたのがわかる。
大きな手がテーブルの上にある琥珀糖の瓶を取って、またぽすんとソファに腰を下ろす。


「これ。綺麗だね」


気が付けば、私は葛城さんの足の間に腰を落ち着けて、ぴったりと背中を密着させていた。


「お菓子?」


肩の近くに葛城さんの顔がある。

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