艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「美味しい」
「それは……良かったです」
気を張って肩に力を入れているのもしんどくなって、ころんとふたたび琥珀糖がてのひらに転がったとき、ほうっと力が抜けて後ろの彼に凭れ掛かった。
ひとくちサイズの琥珀糖を、今度は自分の口に運ぶと、優しい甘みが舌に乗る。
……うん。美味しく出来てる。
口の中で、体温でじんわりと甘味が溶けてひろがるのを味わう。
私自身も、温めるように後ろから包まれていて、この状況を受け入れてしまえばとても、気持ちが良かった。
ちゅ、と耳の近くに唇が触れる。それから、少し顔だけ横を向けば、今度は頬に触れる。
じっと、彼が私の反応を待っている。
……嫌じゃない。
空気に呑まれてぼんやりとした頭では、それだけ判断するのが精一杯で、私は上半身を半分振り向かせ片手で彼のシャツを握った。