艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
一瞬だけ、舌先が触れ合う。


濡れて、甘い。
驚いて跳ねた身体は肩を抱く腕に支えられ、咄嗟に動きかけた手はいつのまにか手首を彼に抑えられていた。


引っ込めてしまった舌を、誘うように再び唇を啄み「もう一度」と強請られる。
ぎゅっと目を閉じて再び差し出すと、彼がゆっくりと舌同士を絡み合わせた。


唇で挟み、吸い上げて、徐々に絡み方が濃厚になる。じわ、と眦に涙が滲んだ。舌先がこんなに敏感だなんて知らなかった。


やがて、上がる息に空気を求め唇を大きく開く。その隙に、彼の大きな舌が私の口の中に入り込んだ。


驚いたけれど、力の抜けてしまった身体はもう、翻弄されるだけだった。
頭の片隅で、キスってこんなに甘かったんだ、とちらりと過る。


その甘味は、キスの直前互いに含んだ琥珀糖の甘味だったのだけれど。
私の頭の中はこの時、キスの甘味だと勘違いしていた。

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