艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
紅茶で口の中を湿らせたあと、彼がフォークを皿に置いた。とくん、と期待した心臓が先走る。
「美味しいよ。ありがとう」
シフォンケーキのやわらかさそのままの、優しいキスに目を閉じる。
甘い、甘いキスは、あれからとても穏やかで、浅く舌を絡ませて離れていく。それでは物足りないと感じるくらい、情熱的なキスを私に教えたのは彼なのに。
たくさん話してくれる。
キスも甘くて優しい。
けど、抱きしめてくれることが、余りない。触れ方が足りなくて、私は寂しさが募りまた甘えてみたくて彼の背中に手を回そうとする。
「今夜は? 泊まっていく?」
ぽん、とまた、頭に手を置かれて身体を離された。