艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
近すぎて、まともに顔を見てられなくて目線を下に下げた。そしたらワイシャツが開けていて、胸板や鎖骨がすぐ目の前にあり今度は横を向く。


「か、葛城さん?」

「うん? どうぞ、聞くから話して」


声と一緒に、彼の息が耳にかかった。びくっ、と身体が震えてしまい、恥ずかしさに顔が熱くなる。


「でもこれ聞く体勢じゃ……」


反論の途中で、彼の片手が私の顎を掴んで持ち上げた。自然、彼の顔を目の前に見上げることになる。


「無防備が過ぎるって忠告したのに。言うこと聞かないから俺も好きにさせてもらってるだけ」


低く静かな声に、身体の芯が震えた。意識し過ぎて、ちゅ、と軽く唇を啄まれただけでぎゅっと目を閉じてしまう。

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