艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「んっ……」
いつもより少し乱暴に唇が塞がれる。大きな舌が私の唇を割り歯の間もこじ開けて、口内を愛撫した。上顎と、舌先やその裏まで撫でまわされるうち、大きく口を開いてしまう。
このところの穏やかなキスとは全然違う。壁に押し付けられ、逃げ場のない私の唇を舐り貪る。ぎゅっと、彼のシャツを握る。伝わってくる彼の体温は熱かった。
舌を吸いあげられ、彼の口の中で甘噛みされれば膝が震えた。立っているのが心許なくなると、察した彼の片腕が私の腰に絡みつき抱き寄せる。
「んんんっ……」
溢れる唾液が、唇の端から零れるのがわかった。それがひどくはしたなく思えて、恥ずかしくなる。
それなのに、彼のキスが唇を逸れ、その唾液を舐め取る様に顎から首筋へと降りていく。
「やっ……あっ」
私の腰を抱く片腕が強くなり、足が少し浮いた。背の高い彼が私の首筋に口づけやすいようになのだと気付けば、羞恥と畏怖が私の中で混ざり合う。どうなっても自分の力では逃れられない状況なのだと、教えられている。