艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
私の肩を掴む手に、一瞬力がこめられた。
それから、ゆっくりと和らいでいく。
指が優しく頬を撫で、ようやく視界がはっきりとしたときには、彼はもう穏やかな顔に戻っていた。
「……ひとつ、決め事をしようか」
私と目を合わせ、彼が静かな声で言った。
応えた私の声は、まだ少し震えていた。
「……決め、事?」
「今度俺の寝室に入ったら、止めないよ。俺の理性にも限界があります」
少しおどけてそう言うと、彼は立ち上がる。
「風呂に入ってくるから、その間にちゃんと逃げておくように」
ぽん、と頭に手を乗せて、彼はまだ呆然とする私を残し寝室を出て行った。