艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
逃げろと言われた。
だから逃げた、というだけで本当に逃げ出したかったというわけではない。
そこまで頭が働かないからわからない。


寝室の隣のゲストルームに入って、ぽすんとベッドに腰を下ろす。
そしたら、目の前のドレッサーに上半身のブラウスが開けた自分の姿が映って、また身体が熱くなる。


酷い格好だった。
泣き出しそうなくらいに潤んだ目で、手がカタカタ震えていた。


でも嫌じゃないのに。
いずれ夫婦になるのに、どうして葛城さんはあそこで止めてしまったのか。


私がまだキスも知らないでいたときは、彼の方から距離を詰めてきたのに。

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