艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

職人の父らしいと言えば、その通りだが、これでは毎日相手をしている兄も大変だろうなと同情する。
どうにか、父を刺激しないように、言葉を探す。


「……花月庵の和菓子はどこより美味しい。好きだから、それを先に残す努力もして欲しい」


父の返事を待ったが無言が続く。多分、私に言われなくてもわかっているとは思うけれど。


「今働いてくれてる人のためにも、少しでも良い形で、って葛城さんは考えてくれると思うよ」


あ、しまった。
ここで葛城さんの名前を出したら絶対逆効果だ、と思ったが、つい、言ってしまった。


案の定、父の眉間がぴくりと動く。父からしてみれば、葛城さんは生意気な若造としか思えないのだろう。
やたら荒々しい仕草で、置いてあった湯飲みのお茶を飲み干した。

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