艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
真っ赤になった私を見て、父が嫌そうに舌打ちをする。


「ちょ、聞いといて舌打ちって」

「もういい。わかった」

「はっ? ちょっと……」


恥ずかしさのあまりに余計に腹も立って、バトル再開となりかけたが、襖越しにかけられた母の声に遮られる。
開いた襖の間から、母とその後ろに先ほど店にいた従業員の姿が見えた。


「お父さん。今日もいらしたそうですけど、店の方にいかれます?」

「いや。隣に通せ」


どうやら、店に父を訪ねて人が来たらしい。隣の客間に通すつもりのようだ。


「お通しして。お茶も出してくださる?」


母が女性従業員に声をかけると、出ていく父と入れ替わりに私のいる仏間に入る。
父は出る間際、


「藍。お前はここにいろ」


と言い残していった。

< 215 / 417 >

この作品をシェア

pagetop