艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「ね、お客さんなら私帰るけど」

「いいから」


母は私の隣に腰を降ろすと、眉をしかめた。


「まったく、あんたは。昔っから気の強い子だけど……今回、お父さん結構ショック受けてたのよ」

「え……何が?」

「親子喧嘩はしても、こんなにはっきり反抗してみせたのは初めてでしょ。あんたが葛城さんのパートナーとしてパーティーに出てたって知った時のお父さんの顔ったら……可哀想だったわよほんとに」


そう言われて、首を竦めた。
だけど私は、少しも後悔していない。


「私だって花月庵のことちゃんと知りたかった。役に立ちたかった」

「わかってるわよ。けど、お父さんが藍を店から遠ざけたのも親心だったのよ」


もちろん、それもわかっているが。
反論するのは止めて、小さく頷く。


その時、廊下を人が歩く気配がして、母が私に向かって人差し指を口の前にあて「静かにね」と言った。

< 216 / 417 >

この作品をシェア

pagetop