艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「まったく、毎日毎日懲りないな、あんたも」
父の不機嫌な声が隣の部屋から聞こえてくる。
それに返した人物の声に、私は驚いて目を見開いた。
「何度でも参りますよ。店頭で追い返されてたのが、やっとここまで通していただけて感謝します」
間違いなく、それは葛城さんの声だった。
しかも。
「ふん。百夜通いにはまだ足りないがな」
「今日こそは、こちらに目を通していただきます。どうぞ、花月庵の事業計画書です」
話を聞いて唖然とする。
父を説得するために何かしているのだろうとは思っていたが。
まさか毎日、事業計画書を持って通っていたのだろうか。
しかも聞いていれば、今までは店頭で追い返されていたという。