艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「まったく、毎日毎日懲りないな、あんたも」


父の不機嫌な声が隣の部屋から聞こえてくる。
それに返した人物の声に、私は驚いて目を見開いた。


「何度でも参りますよ。店頭で追い返されてたのが、やっとここまで通していただけて感謝します」


間違いなく、それは葛城さんの声だった。
しかも。


「ふん。百夜通いにはまだ足りないがな」

「今日こそは、こちらに目を通していただきます。どうぞ、花月庵の事業計画書です」


話を聞いて唖然とする。


父を説得するために何かしているのだろうとは思っていたが。
まさか毎日、事業計画書を持って通っていたのだろうか。


しかも聞いていれば、今までは店頭で追い返されていたという。

< 217 / 417 >

この作品をシェア

pagetop