艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「牛歩、とはまた意味が違うと思うけど……」


何せよ、随分地道な戦法を繰り返していたのだと、驚かされる。
あの父を相手に、しかも毎日。


黙って耳をそばだてながら、膝の上でぎゅっと拳を握った。


葛城さんの方が、もっと強く出れるはずだろうに、しかもさっきから、私を盾にする様子もない。


「藍との縁談が持ち上がってすぐだったのよね、株を買い占められてしまって」


母が、小声でささやく。


「だから私もお父さんも、てっきり藍を盾にされたと思って余計に反感しかなかったんだけど」

「そうはならなかった?」

「しつこい、とはお父さんも辟易してるけどね。柳楽堂の食品偽装、昨日出たでしょう。買収されたのがあっちだったら大変なことになってたからね。それでお父さんもちょっと折れる気になったみたいよ」
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