艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
それからも、背筋を伸ばし正座のままで、暫く黙って隣の話を聞いていた。
喧々囂々と言い合いながらも、それは互いに忌憚なくビジネスを進めていこうという葛城さんの誠意にも私には聞こえた。
私は花月庵を守るために。
葛城さんは、こういったやりとりをしなくともすんなりと花月庵の持つ技術と顧客を得られるように。
それが、私との結婚の意味だったはずなのに。
父をビジネスの相手として尊重してくれている。
この人を好きになって良かった……。
間違いはなかったと自分の心がとても、誇らしかった。
例え恋愛感情はなくとも、この人は人としての情を持っている。
じん、と胸の中が熱くなるのを感じていると、襖の向こうが少し、静かになった。
互いに言い合うことに疲れたのかもしれない。
次に聞こえた声は、落ち着いた父の声だった。