艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「……俺は今流行りの店にしたいとかは思ってない」
「それは勿論……」
「それを踏まえてもう一度練り直して来い」
あの父に、再び話を聞いてやると言わせたようなものだ。
思わず、固く手を握りしめていると、父のうんざりとした声が続いた。
「だから、毎日来るのはやめろ。次の案が出来てからでいいからな」
百夜通い作戦がかなり効いていたらしい。
「わかりました。では、後日もう一度。ありがとうございます」
「俺は、菓子職人だ。経営には向いてないと自分でよくわかってる」
「そんなことは」
「葛城さん。あんたはうちの技術と顧客が手に入ればいいんだろう。こんなことを繰り返して無駄だとは思わないのか」