艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「……可愛らしいですよ。本当に。素直でまっすぐで感情が豊かで」


じっとそばだてていた耳に響いた、やたら、しみじみとした声だった。
そう聞こえた途端に、顔や耳が火照りはじめる。


気恥ずかしさに片手で顔を覆い、隣にいる母の視線から逃げた。
とてもありふれた褒め言葉だけれど、お世辞でも嬉しい。


悶えそうなのを堪えていたら、まだ私の話は続く。


「素直過ぎて危なっかしいところもあるし」

「女はそれくらいのがいいんだよ」

「怒らないでくださいよ、別に貶してません。放っておけないという意味です。びっくりすると口より先に手が出るところも、見ていて本当に飽きない」

「……おい」

「花月庵を守りたい、って気合を入れて会いにきてくれた時の、びくびくしながらもこっちを睨む目がなんともいえず、可愛らしくて……」


襖一枚挟んだこんな近くで一連の告白を聞いていた、私は正座をしたまま全身から汗が噴き出しそうなほど真っ赤になって固まっていた。

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