艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

盛大な惚気にしか聞こえない葛城さんの言葉に、父が焦って声を荒げる。


「おい! まだ手は出してないだろうな!」


ぎょっとして、私の方が声をあげそうになった。


「出してませんよ、約束ですから」


葛城さんが悪びれないような言い方でそう応えているけれど、私は気が気じゃない。


「本当だろうな」

「本当です」


「……ほんとに?」とこっそり耳元で母に囁かれ、心配そうに私を見る母にびくっと震える。
手を出す、とはどの程度のことを言うのだろうと判断に迷いながら、こくこくと必死で頷いた。


なんという話を娘の前でするのか、あの父は。
しかも、葛城さんは私がここにいるって知らないのに性格が悪すぎる。


だけどそれを言うなら私も、こんなところに隠れていないで葛城さんの前に出て行けばいいのだ。
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