艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
胃が痛むような恥ずかしさの中、声を上げようとした時だった。
「……あんたの目的が、最初はわからなかった」
襖の向こうの会話が核心に触れた。
「どうしてですか。最初から俺は嘘は言ってません」
最初、というのはいつのことだろう。私と会った、祖母の誕生日以前のことだろうか?
だとすれば、父に私との縁談を持ち込んだ日か、花月庵を買収した日?
その時、どういった会話がなされていたのだろう。結局私は息を飲んで、ふたりの会話からその話が出るのを期待した。
ところが、だ。
「……嘘はないんだな」
「はい」
「……わかった。これに名前書け。それを使うかどうかは藍に決めさせる」
お、お父さん……!
なんと、結局私にその大事な部分は聞かせるつもりはならしい。
期待した分、余計に気になって仕方がなく、どうしたものかと思っていれば、また父の声がした。
「藍、入ってこい」