艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
なんだか、眩暈がしそうだ。
つい昨日まではぐらかしてばかりだったのに、まるで枷が外れたかのように、彼はまだ止まらなかった。
「驚いたら、口より先に手が出るところとか」
「そっ……その節はすみません、てば」
「案外怖がりってことだよ。そのくせ、一度信用すると今度はこっちが心配になるくらいガードは緩くなるし……」
「そんなことないです」
「ある。男としては、嬉しいけどね。放っておけなくなるし」
「危なっかしいってこと?」
「そういう意味もあるかな。素直過ぎて騙されやすそうだし」
「やっぱり悪口じゃないですか」
言葉だけ聞いてれば、褒められてる気がまったくしない内容だ。
それなのに、語る声や見つめる目が、とにかく甘くて優しくて、だから無性に恥ずかしくなる。
「そのままの君でいられるように、守らせて欲しいと思ってるよ」
触れ合った手はそのままに、空いた手が私の頬に触れた。
「花月庵も含めて、君が大事にしているもの全部。だから傍に居て欲しい」