艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
とろりと蜜のように絡む視線に見つめられ、つい視線が逃げてさ迷う。
俯いてしまいそうになったとき、頬の手に邪魔されて上向かされた。
嬉しいけれど、恥ずかしくて、涙が滲む。
答えなんて決まっているのに、それを伝える言葉が咄嗟に浮かばない。
はい、とそれだけ言えれば、伝わるだろうか。
けれど彼の瞳の中にまるで懇願するような熱を感じたとき。
切望されているのだと気づいた。
私が、彼の気持ちをあれだけ探したように。
彼もまた、私の気持ちを探しているのだ。
花月庵を理由にしない、純粋な気持ちを。
「あ……私は」
心臓が、このままじゃ伝えきるまでに力尽きるのじゃないかと思うくらいに、痛い。