艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
ただでさえ……心臓が破裂しそうなくらいなのに。
髪を乾かしている間も、昨日腰が抜けてしまった感覚が蘇る。
キスと指でちょっと肌をくすぐられただけであんなになるのに、どうなっちゃうの。
「うう……さっきの、絶対わざと呟いてった」
あの人は、なんなの。
私にわざと、まだ感覚も生々しい夕べのことを思い出させて、私に逃げてほしいのか。
そうやって私が怖がらないか試しているのか。
そう思うと、悔しくなって私は葛城さんの寝室のドアの前に立った。
だって、夕べだって私は逃げたかったわけじゃないのだから。
そっと、ドアノブに手をかける。
入ろうと思うと、やっぱり緊張してしまう。