艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
開けると、中はまだ照明も付かなくて真っ暗だ。


……ベッドで待ってればいいの?


さすがにそれは、躊躇う。
けどだからといって、部屋の隅でぼーっと立ってられても葛城さんもびっくりするだろうし。


中には入らずにそんなことを考えているうちに、葛城さんがシャワーを終えてしまったようだった。


引き戸は閉まったままだけれど、水の音が止まったのがわかったのだ。


ど、どうしよう!
早く中に入らなければ、と狼狽えているうちに、あっという間に引き戸が開いて驚いてしまった。


出てきた彼は、まだ髪も少し濡れていて、バスローブ一枚だった。
男の人ってずるい、悩むことなくそれだけでいいなんて。


「どうしたの?」


寝室の前で立ち止まったままの私に、不思議そうに近づいてくる。


「結界でも張ってある?」


そう言ってくすりと笑った。
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