艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
私にとっては、結界と同じくらいの効果はありそうだ。
それくらい、この一歩が、勇気がいる。


背中から抱きしめられて、どくん、と心臓が高鳴った。
片手で彼が入り口の近くにある照明のスイッチを入れると、調節してあるのだろう案外優しい明るさのダウンライトが灯る。


「あ、あの……」

「うん?」

「わ、私、初めてで……」

「知ってる。逃げたくなった?」

「そうじゃな……」


ぴったりとくっついた背中から彼の体温が伝わってくる。
緊張してどうしたらいいかわからないだけで、逃げたいわけじゃないのだと伝えようと彼を見上げたら、そのまま顔を彼の手で固定された。


「んっ……」


振り仰ぐ、不自然な姿勢のまま唇が塞がれる。いきなり夕べのような、容赦なく官能を身体に感じさせる濃厚なものだった。

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