艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「本当に、大丈夫なんですか?」


実は、これだけじゃない。こっちに到着するまでにも、何度か着信があったのだ。
出れるときは彼も出ていたけれど、ほとんどはスルーしてしまっている。


「大丈夫、後でかけなおすよ」


彼はそう言って笑うけれど、やはり無理して休みを作ってくれたのだろうかと気になってしまう。


「大事な用だったらいけないし、かけなおすなら車止めてもらってもいいですよ」


一緒に旅行を楽しめるのは嬉しいけれど、仕事の邪魔をしたいわけではない。
そう思って言ったのだが、彼は片手で私の頭を撫でて「大丈夫だよ」と笑った。


その後、車は少し渋滞に巻き込まれたものの、四十分ほどで芦屋の郊外に入る。
閑静な住宅街の中に、広い敷地の中に可愛らしい洋風の家のような建物がふたつ建っていた。


そのうちのひとつが店舗のようで、もう夜になるというのに頻繁に客の出入りがある。

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